位置
小笠原(諸島)は、日本列島南方の北太平洋上に位置し、南北約400kmに渡って散在する島々の総称で、父島、母島、聟島の3列島からなる小笠原群島、火山(硫黄)列島及び周辺孤立島からなります。父島、母島、聟島の3列島は大小30あまりの島々から構成され、すべての島の面積を合わせても約105平方km(伊豆大島は約90平方km)です。
小笠原は、日本列島から約1,000km、マリアナ諸島から約550km離れており、どの島も成立以来大陸と陸続きになったことがない海洋島です。
![]() 小笠原諸島の位置 |
![]() 小笠原の島々の位置 |
地形・地質
小笠原群島は、約4,800〜4,400万年前に形成された海洋性島弧であり、さまざまな地形・地質を観察することができます。
◆ボニナイト
![]() 地上で観察できるボニナイトの露頭 |
「ボニナイト」とは、海洋プレートの沈み込みが始まって間もない時期(島弧の誕生期)にのみ発生する特殊な安山岩の一種です。このボニナイトには、「単斜エンスタタイト」という輝石類が含まれます。この鉱物は、隕石にはよく含まれるものの、地球上の岩石ではボニナイトのみに含まれる珍しいものです。
小笠原は、海底火山の衝突による隆起・陸化により、このボニナイトが世界で最も大規模に露出し、良い保存状態で残され観察できる地球上で唯一の場所です。
◆カルスト地形
![]() 扇池(南島) |
小笠原の南島一帯及び母島の石門一帯では、石灰岩が侵食や風化を受けてできた「カルスト地形」が見られます。特に南島では、ラピエと呼ばれる鋭く尖った岩や、ドリーネと呼ばれるすり鉢状の窪地(扇池、鮫池等)が顕著に見られます。また、南島周辺はカルスト地形が海中に沈降した沈水カルスト地形が見られる国内でも珍しい場所です。
このようなカルスト地形は、小笠原の魅力的な景観を形づくっています。
![]() ラピエ(ジニービーチ) |
![]() 南島空撮 |
◆その他特徴的な地形と景観
隆起を続ける小笠原では、高さ200mにも及ぶ「海食崖」が随所に見られるほか、海底火山の噴火で生じた「枕状溶岩」、大型有孔虫の化石「貨幣石」などの特徴的な地形・地質からなる景観が見られます。
![]() 海食崖(父島千尋岩) |
![]() 大型有孔虫の化石である貨幣石 |
小笠原の生態系
小笠原の気候は年間を通じて温暖であり(年平均気温23℃)、気候帯では亜熱帯に含まれています。ただし、同様の気候帯のマリアナ諸島やハワイ諸島などと比較すると、気温の年較差が10℃と大きいことが特徴といえます。年降水量は1,280mmで、比較的乾燥しています。我が国の亜熱帯は、南西諸島と小笠原諸島の2箇所にありますが、それぞれの地域の生態系は大きく性質を異にしています。その違いが生まれた最も重要な要素は、小笠原が海洋島であるという地誌的な条件です。
![]() キノボリカタマイマイ(提供:千葉聡) |
小笠原の生物はすべて何らかの方法で(鳥に運ばれたり、海流や風に流されたり、流木に付着したりして)、島に偶然たどり着き、島の環境に適応して生き残ったものの子孫です。小笠原に定着できた種は、その後本土とは隔離された状態で長期間独自の進化の道を歩み、その中には固有種へと進化するものも出現しました。
このように、小笠原でしか見られない固有の生物が多く生息・生育していることから、小笠原は「東洋のガラパゴス」と呼ばれています。特に、陸産貝類や植物、昆虫類においては、今なお進行中の進化の過程を見ることができるため、小笠原は、種分化の過程を良好に保存している「進化の実験場」といえます。
![]() 固有種オオハマギキョウ |
![]() 固有種ヘラナレン |
![]() 固有種メグロ(提供:小宮圭一) |
![]() 多くの固有種が生息・生育する乾性低木林 |
![]() クロアシアホウドリ |
また、小笠原は、アホウドリ類など世界的に重要な絶滅のおそれのある種の生息・生育地であり、太平洋中央海洋域における生物多様性の保全のために欠かせない地域でもあります。
小笠原の海
![]() イルカ(提供:小笠原村観光協会) |
小笠原の海は、同緯度にある沖縄の海とは異なり、濃い青色をしています。サンゴ礁や色とりどりの熱帯魚、海中へ向かって鋭く落込む黒い岩肌など、多彩な海中景観が広がっています。また、小笠原諸島の周辺には数多くのイルカやクジラなどが生息しており、日本最大のアオウミガメの産卵地でもあるなど、海域においても様々な生物を見ることができます。
![]() アオウミガメ |
![]() ユウゼンとリュウモンサンゴ |
![]() 固有種オビシメ(提供:Jiro SAKAUE) |
小笠原の魚類については、固有種の判断が難しいことから陸上の生物ほど研究が進んではいませんが、それでも、淡水魚ではオガサワラヨシノボリ、海水魚ではオビシメやミズタマヤッコ、ミナミイカナゴなどが固有種であるとされています。また、他地域と小笠原周辺では体色が異なるなど地理的な変異が見られる種(ミナミイスズミなど)も数多く知られています。
![]() 固有種ミナミイカナゴの群れ(提供:Jiro SAKAUE) |
![]() ミナミイスズミ(提供:Jiro SAKAUE) |
人々との関わり
小笠原は、1593年に小笠原貞頼により発見されたと伝えられています。その後、1830年まで定住者はおらず、「無人島(ボニン・アイランド)」と呼ばれていました。現在では、父島、母島の2島に約2,300人が生活しており、それ以外の島々は無人島となっています。
小笠原には空港がなく、定期船「おがさわら丸」で、東京竹芝桟橋から父島まで片道およそ25.5時間を要します。それにも関わらず、ホエールウォッチングやダイビングをはじめ、小笠原の美しい海や特異な生態系に魅せられて、年間約17,000人もの観光客が訪れ、エコツーリズムが進められています。
![]() エコツーリズムの風景(提供:小笠原村観光協会) |
![]() エコツーリズムの風景 |
一方で、1830年からの人間の定住に伴って小笠原にもたらされた外来種は、小笠原本来の生態系を脅かし続けています。





















