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小笠原の価値とは

小笠原の価値

世界自然遺産に登録されるためには、「自然景観」「地形・地質」「生態系」「生物多様性」の4つのクライテリアのうち、1つ以上に合致することが必要です。

小笠原諸島は、地球と生物の進化に関する貴重な情報を提供する重要な地域であり、「地形・地質」「生態系」「生物多様性」の3つのクライテリアに合致すると考えています。

世界遺産に推薦するにあたって、小笠原諸島の世界遺産としての価値を示した「推薦書」を作成しました。

このうち、小笠原の生態系についてクライテリアに合致することと認められました。


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→ 推薦書(日本語版) (19.4MB)

→ 推薦書(英語版) (15.5MB)

→ 推薦書付属資料(日本語版一部抜粋)

  ・小笠原諸島の地質的特徴(地質の概要と発達史(5.51MB)、小笠原諸島の特徴的な地質を観察できる場所(1.66MB)、地質図(30.5MB))

  ・植生図(107MB)

  ・種リスト(1.20MB)


小笠原の地形・地質

海洋性島弧の様子が見られる海底地形
海洋性島弧の様子が見られる海底地形

小笠原諸島は4800万年前に太平洋プレートが沈み込みを開始したことによって、海洋地殻の上に誕生した海洋性島弧です。沈み込み始めて間もない小笠原海嶺下のマントルは高温であったため、広範囲に無人岩(ボニナイト)という特異なマグマが発生しました。ボニナイトは、地球上で唯一単斜エンスタタイトを含む高マグネシウムの安山岩です。プレートの沈み込みが進むにつれて、生成したマグマは化学組成を変化させ、性質の異なる島弧火山が誕生しました。約4800万年前に形成された父島列島と聟島列島、約4400万年前に形成された母島列島、現在も活動中の火山列島と並んでおり、プレートの沈み込み帯における海洋性島弧の形成と進化の過程を、沈み込みの初期段階から現在進行中のものまで見ることができるのです。

小笠原諸島では、岩脈や枕状溶岩、硫化鉱床などによって当時の海底火山形成過程を再現することができます。この島弧形成は活火山群である西之島や火山列島では今も進行中です。また、貨幣石を始めとする熱帯性動物化石群も見られます。

こうした海洋性島弧の形成過程は世界中で起こっている現象ですが、初期段階の地形・地質が地殻変動による破壊を受けず、まとまった規模で陸上に露出しているのは、世界でも小笠原諸島だけです。これは、太平洋プレート上にある海底火山が、フィリピン海プレートに衝突し、その一部を隆起させたためです。

父島釣浜のボニナイトの露頭
父島釣浜のボニナイトの露頭
大型有孔虫の化石である貨幣石
大型有孔虫の化石である貨幣石

また、小笠原諸島では古くから地球科学的研究が行われてきており、世界で最も研究が進んでいる地域の一つです。近年の精密地震波構造探査によれば、太平洋プレートの沈み込みに伴う島弧火成活動によって、現在青年期にある伊豆−小笠原弧の地下では、大陸の基となる安山岩質の中部地殻が形成されつつあります。これらの研究により、海洋性島弧が衝突により合体、大型化する過程を繰り返して現在の大陸ができたと考えられるようになりました。

このように小笠原諸島は、海洋性島弧の形成過程をその誕生から幼年期を経て現在進行中の青年期まで観察することができる唯一の地域であるとともに、海洋地殻から大陸地殻への進化の道のりを記憶する地球史の顕著な見本なのです。


◇補足説明 pdf

→ 無人岩(ボニナイト) (35KB)

→ 海洋性島弧の形成過程 (175KB)

→ 大陸地殻の形成 (244KB)

→ ホームページ「小笠原諸島の地質ガイド
   :海野進 金沢大学(小笠原世界自然遺産候補地科学委員会委員)

小笠原の生態系


カタマイマイ属の貝類の多様性
カタマイマイ属の貝類の多様性(提供:千葉聡)

小笠原諸島では限られた面積の中で独自の種分化が起こり、数多くの固有種が見られ、特に陸産貝類や植物、昆虫類においては、今なお進行中の進化の過程を見ることができます。これらは他の多くの海洋島では失われてしまったものですが、小笠原諸島では数多くの研究が実施されています。

なかでも陸産貝類は100種(固有種率94%)が確認され、現在も新種の発見が続いており、7つの固有属があることが知られています。カタマイマイ属では樹上性、地上性などの生態型により形態変化が見られ、化石種も含めて、過去から現在までの進化系列や種多様性の歴史的変遷を追うことができ、適応放散による種分化の典型を示しています。

アナカタマイマイ
アナカタマイマイ(提供:千葉聡)

兄島の乾性低木林
兄島の乾性低木林

乾性低木林には、東南アジアや沖縄の照葉樹林の構成種に対応する固有種が見られることから、照葉樹林の構成種が海洋島である小笠原諸島に到達した後、乾性な気候条件に合うように適応したことにより成立したと考えられています。ただし、大陸で優占するシイ・カシ類を欠くため、その種組成は独特の内容となっています。


また、適応放散により生じた固有種が数多く見られるとともに、雌雄性の分化や草本の木本化など、海洋島独特の進化様式も観察できます。昆虫類では、オガサワラカミキリ属やヒメカタゾウムシ属などで進化の過程についての研究が進められています。

このように、小笠原諸島は海洋島における種分化の過程を保存している「進化の実験室」であり、重要な進行中の生物学的過程を代表する顕著な見本であるといえます。これらによって、小笠原諸島の特異な生態系が形成されています。

オガサワライカリモントラカミキリ
オガサワライカリモントラカミキリ(提供:苅部治紀)

◇補足説明 pdf

→ 陸産貝類固有種 (33KB)

→ カタマイマイ属の種分化 (58KB)

→ 乾性低木林 (55KB)

→ 適応放散による種分化 (13KB)

→ 雌雄性の分化、草本の木本化 (595KB)

→ 昆虫類の種分化 (49KB)

→ ホームページ「進化の小宇宙:小笠原諸島のカタマイマイ
   :千葉聡 東北大学大学院(小笠原世界自然遺産候補地科学委員会委員)


小笠原の生物多様性

シマホルトノキ
シマホルトノキ

小笠原諸島は多様な起源の種が混在しているのが特徴であり、植物では「オセアニア系」、「東南アジア系」、「本州系」などが知られています。それらが独自の種分化をとげた結果、小さな海洋島でありながら種数が多く、高い固有種率となっています。前述の陸産貝類の他、乾性低木林を構成する植物では69種(木本のみでは54種)の固有種が確認されており、固有種率は67%(木本のみでは81%)です。

また小笠原諸島は、オガサワラオオコウモリ(CR)、メグロ(VU)、シマアカネ(CR)、カタマイマイ(DD)などIUCNレッドリスト(2008)記載種57種のかけがえのない生育、生息地となっています。鳥類では固有種メグロにより、BirdLife Internationalの固有鳥類生息地域(Endemic Bird Areas of the World)に指定されています。また、北太平洋に分布するアホウドリ類2種と、カツオドリ類、アジサシ類等の亜熱帯性の海鳥12種が繁殖しています。

このように、小笠原諸島は世界的に重要な絶滅のおそれのある種の生育・生息地であり、また、太平洋中央海洋域における生物多様性の保全のために不可欠な地域であるといえます。

メグロ
メグロ(提供:小笠原村観光協会)
オガサワラオオコウモリ
オガサワラオオコウモリ(提供:東京都)
クロアシアホウドリ
クロアシアホウドリ

◇補足説明 pdf

→ 種の起源の多様性 (18KB)

→ 固有種率 (13KB)

→ 乾性低木林の固有植物 (31KB)

→ IUCNレッドリスト記載種 (32KB)

→ 固有鳥類生息域(EBA) (106KB)

→ 海鳥類の繁殖 (152KB)